「あれも、これも、やらなくていい」。型破りなウエディングプランナーが生み出した、田町発の水上結婚式とは

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ちょっと前ですが、芝浦の運河でこんな光景が見られました・・・

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そう、晴れやかな表情の新郎新婦が、おなじみ東京ウォータータクシーさんのかわいい黄色い船で移動されていたんです。運河沿いや橋の上にたまたま居合わせた街の人たちからも祝福され、周囲は一気に幸せな空気に包まれました。

「あ〜こういう風景がある街っていいな〜」とほっこりしつつ、でもあれなんだったんだ?結婚式に船で移動?それとも船で結婚式?など、疑問を持たれた方もいるのでは。そこで、東京ウォータータクシーの井上さんにお願いしたところ、企画された方に直接お話を伺えることになりました。

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水上ウエディングを企画したエシカルウエディングの三浦さん

田町新聞
「先日、新郎新婦らしきおふたりが東京ウォータータクシーさんで移動されていて、あれは結婚式かなにかだったんですかね」

三浦さん
「はい、田町から浜離宮恩賜庭園のそばまで船で移動し、水上で挙式をおこなって、ちょうど戻ってきたところだったかと」

田町新聞
水上で挙式!なんだかロマンチックですね。これまでそういう光景は田町で見かけなかったような気がするのですが」

三浦さん
「はい、実は東京ウォータータクシーさんと組んでやったこの取り組み、今回がはじめてでして」

田町新聞
「あ、そうだったんですね!具体的にどんな結婚式だったんですか」

三浦さん
「まず新郎だけを乗せた船が田町を出航し、浜離宮恩賜庭園そばの水上で待っていると、新婦が別の船の先端に立って登場するんです」

田町新聞
「おぉ、ドラマチック!ひとりタイタニック的な!

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新郎も船の先端に立って新婦の登場を待っています

三浦さん
「水上でファーストミート(お互いの晴れ姿をはじめて披露)となるのですが、そこであらためて彼が彼女にプロポーズをして」

田町新聞
「あ〜なんか聞いているだけでドキドキするな〜!」

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なんて素敵な笑顔なの!

三浦さん
「みなさんお話を聞いてみると、意外ときちんと言葉にしてプロポーズをしたという方は少なくて。なので、私は“結婚してください”ってひとことでいいから言ったほうがいいよ、今後の決意が違うよ、ってアドバイスさせていただいています 笑」

田町新聞
「あ〜いいですね〜。しかも水上でなんて。間違いなく一生の思い出になるなぁ」

ちなみに編集長のプロポーズは・・・あ、誰も興味ないですね。失礼しました。

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三浦さん
「そのあと新婦は一度自分の船に戻ってお母様にベールダウンをしてもらい、お父様のエスコートで新郎の船に移動し、牧師先生も出てきてそこで挙式がおこなわれます」

田町新聞
「てっきり、浜離宮恩賜庭園内のどこかに移動するのかと思っていたのですが、すべて船に乗ったままおこなうんですね!」

三浦さん
「はい、水門があってとても波が少ない場所でして。今回は3隻の船を水上でドッキングさせて挙式をおこないました」

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田町新聞
「なんか色々と特別感があるなぁ・・・。
今回の水上ウエディングはどんな会社が企画されたんですか?」

三浦さん
「あ、会社というかチームですね。私がウエディングプランナーとして窓口になり、カメラマンさんやヘアメイクさんなど、プロの方々と一緒に組んで運営しています」

田町新聞
「そもそも三浦さんはなぜこのお仕事を?」

三浦さん
「わたし実はブライダル業界結構長いのですが、見習いのときに忘れられない出来事があって。もともとは大きな会場で式を挙げる予定のお二人だったのですが、お父様が急に倒れられて余命宣告を受ける状況になってしまって」

田町新聞
「な、なんと・・・」

三浦さん
「それで急遽自宅でやりましょうと。すでにお父様はモーニングを用意されていたのですが着られる状況ではなかったので、切ってしまいましょうとご提案して。それで写真を撮ってご自宅で式を挙げたら、寝たきりの状況だったお父様もすごい喜んでくださって。感動的な結婚式が自宅でもできちゃうんだな、とそのとき思って」

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お客さんの人生に寄り添う仕事に魅力を感じたそう

三浦さん
「ただそのあと企業に入るとわたしが思っていたようなプランニングではなくて。新郎新婦のおふたりが欲しがっていないようなものまで、キャンペーンだから売ってこいとか・・・」

田町新聞
「あ〜そういうのは実際にありそう・・・」

三浦さん
「あとスタッフの体制にも違和感があって。役割分担が細かくされていて、ウエディングプランナーはそれまでたくさん相談をしておふたりのことをよくわかっているのに、挙式当日は現地にいられないんですよ」

田町新聞
え!そうだったの!?

三浦さん
「それで最初から最後まで全部プランナーがお世話できるところに再就職したんですが、今度は会社がつぶれてしまって」

田町新聞
「な、なるほど、それで独立されたと・・・」

三浦さんが新たに立ち上げたエシカルウエディングでは、これまで業界の常識と思われていたようなことも取っ払って、結婚するふたりが本当にやりたいことに向き合って、柔軟に対応しているのが特徴です。

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ちなみに三浦さん、何ごとも自分で経験しないと気が済まない性格でもあって、カメラマンやヘアメイクのアシスタント、お花屋さんでのブーケ作り、披露宴のサービスなど、ウエディングに関わるさまざまな仕事を実際に経験されているそう

三浦さん
「うちは“いい日にいいことをしよう”をスローガンにしていて」

田町新聞
「なんだかハッピーなスローガン!どういうことですか?」

三浦さん
「これまでの結婚式って無駄もたくさんあって。なので私たちは、どうせ紙を使うならエコなバナナペーパーにしようとか、お花もたった一回のためだけに用意するのはもったいないから鉢ごとレンタルにしようとか、食事も新郎新婦がちゃんと食べられるメニューや量にしようとか・・・」

田町新聞
「あ〜確かに、もったいないこと色々ありそう。新郎新婦は席についてゆっくり食事なんてできないものだと思っていました」

三浦さん
「私は“ふたりもちゃんとご飯食べな〜”っていいます。スピーチだったり出し物だったりも、本人たちがやりたくなければ、あれもこれもやらなくていいんですよ 笑」

田町新聞
「なんか結婚式はこういうものだ、ってイメージが凝り固まっていたかも。もっと自由でいいんですね!」

三浦さん
「そうなんです!私、姉の結婚式に参列したとき、途中で彼女の具合が悪くなっちゃったんです。それなのに現場ではあらかじめ決められたスケジュールが優先されて、休ませてあげたらとか誰も言えない空気で。私だったらもっとうまくできるのに!花嫁を一層輝かせてあげられるのに!と思ったことがあって。今思うとこれがウエディングプランナーを目指した最初のキッカケだったかも」

田町新聞
「そんな経験があったとは」

三浦さん
「今は当日でもスケジュールなんて全然変えちゃいます

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本人たちが体調悪いのに無理して続けてもしょうがないから〜。ハハハ〜と笑う三浦さん

なんだろうこの包容力というか、安心感・・・

三浦さん
「あと障がいのある方が家族にいて恥ずかしいから結婚式には呼べないとか、一人っきりにさせられないからお母さんは参加できないとか。これまでそういう話を現場でたくさん聞いてきて。私的にはすごい理不尽に感じて。連れてきて全然構わないのに、わたしがいくらでも調整するのにって」

田町新聞
「た、たくましい・・・」

三浦さん
「とはいえ、いくら偏見を持っていない、支援したいと口で言っても、私が逆の立場だったらどうだろう、と考えたんですね。それで、だったら混ざってしまおう!と障がいのある方のためのグループホームも立ち上げたんです」

田町新聞
「え!!何なんですかその圧倒的な行動力は・・・」

いまは自由が丘で女性専用障がい者グループホームの運営をお手伝い。生活をともにすることで、日々様々な学びや気づきを得ているそう。

三浦さん
「それで水上ウエディングは、実はたまたま天王洲であのかわいい船を見かけて。人目が気になるなら水上でやればいいし、電車でパニックになってしまうような子も船で移動すればいい、いつも決められた場所にいることが多い子達も自分はこんな広い世界にいるんだって水上なら感じられるんじゃないかって」

田町新聞
「なるほどなるほど!」

三浦さん
「はい、東京ウォータータクシーの井上さんにこの話をしたら、すぐに賛同してくださって」

今回のように健常者の方の挙式だけでなく、障がいを持った方、LGBTや外国の方など分け隔てなく、実現できるスタイルを一緒に探ってくれます。

ちなみに今回水上ウエディングを挙げたおふたりは、当初大きな会場で結婚式を挙げる予定だったのが、コロナで結婚式自体を諦めかけていたそう。それを三浦さんが提案して実現。結果、ご本人たちはもちろん、親御さんやご親族もこんな状況にも関わらず、一生忘れられない素敵な結婚式ができた、ととても喜ばれていたそうです。

あ〜よかったなぁ。

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運河を走る船の上から、手を振る二人。こんな結婚式、ほかではなかなかできないですよね

田町新聞も「田町を選んでくれてありがとう」っていいたいです 笑

田町新聞
「ちなみに、やっぱり三浦さんもご自身の結婚式にはかなりこだわったんですか?」

三浦さん
「いえ、それが全然興味なくて

田町新聞
「え、嘘でしょ 笑」

三浦さん
「私、若いときずっと波乗りをしていて、母が“あの子ハワイで結婚式やるって言ったら来るわよ”って。それにまんまと乗せられて」

田町新聞
「し、しかもサーファーだったとは・・・」

三浦さん
「ドレスとかも全然興味なくて母親におまかせで、ノースショアに行ければいいやという感じで」

田町新聞
ぶっ飛んでるな〜 笑

三浦さん
「でも、その時の現地スタッフの対応がスゴイよかったのを覚えています。当日も朝波乗りして、日焼けしてたからお化粧もそこそこに式に出たんですけど。こうしないと駄目、みたいなことは一切言われなくて。みんな最高だねって笑ってくれて」

田町新聞
「あ〜その経験もいまに生かされているわけですね」

三浦さん
「そうかもしれないですね。嫌なものをすすめてもしょうがないし、できるだけ本人たちの自由にというのは心がけているかな」

ということで、エシカルウエディングさんでスタートした水上ウエディングプラン。ここ田町の運河で幸せな風景が今後ますます増えていくことになりそうです。

ぜひみなさんも見かけたら一緒に祝福を!

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ゆりかもめも一緒にお祝いしてくれるかも!?

そして、結婚を予定されている方、これまでの型にはまった結婚式はイヤ、という方はぜひエシカルウエディングさんに相談してみてはいかがでしょうか。ときには友達のように、ときには家族のように、優しく相談に乗ってくれること間違いなしですよ〜

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