「中小企業における“人的資本経営”ってどうしても大企業に比べると遅れがち。
なかなか手をつけられない、後回しになりがちな部分を、
センターとして何かお手伝いできないか——それがきっかけだったんです」
そう話すのは、港区立産業振興センター 副センター長の西岡さん。
会社の成長には欠かせない人の力、つまり従業員やスタッフの能力をどう引き出すか。
そんな思いから生まれたのが、「実践型リーダー育成講座」。
港区立産業振興センターが主催する、全13回・3ヶ月のプログラムです。

今回お話を伺った西岡さん(左)と渋谷さん(右)
公共が“人づくり”に本気で向き合う
テーマはズバリ「人的資本経営」。
と聞くとちょっと難しそうですが、中身は意外と“人間くさい”つくりです。
「経営って結局“人”なんですよ。制度やツールを整えても、動かすのは人。
だからこそ、リーダー一人ひとりが“人を生かす力”を身につけることが大事」と西岡さん。
たしかに言われてみれば納得。
でも現場のリーダーたちは日々てんやわんや。じっくり考える時間なんて取れませんよね。
「だったら、学びながら“自分の現場を良くする実験”ができる場をつくろう——という発想なんです」

「マインド×スキル×仲間」で、動ける人を増やす
講師を務めるのは、クリエイティブギルド代表・渋谷健さん。
企業研修や組織開発の現場で数多くのプロジェクトを手がけてきた方です。
「リーダーシップって、カリスマ性じゃなく“関係のつくり方”なんですよ。
人をどう巻き込むか、どう信頼をつくるか。
そこにAIやデジタルのスキルを掛け合わせて、動けるチームをつくるのが今の時代のリーダーです」(渋谷さん)
講座の柱は3つ。
マインド(考え方)×スキル(AI・DX)×仲間(ネットワーク)。
オンラインとリアルを組み合わせた全13回のセッションで、
毎週のふりかえりにはAIがフィードバックを返してくれます。
どんなことを学ぶの?
たとえば、
・AIを使って自分の発言や思考を“見える化”してみたり、
・チームの対話のクセを分析してコミュニケーションを整えたり、
・「メンバーが自発的に動く仕組み」を小さく試してみたり。
毎回のテーマが、実際の現場の課題に直結しています。
AIと聞くと難しそうですが、実際は“自分を客観視する相棒”みたいな存在。
「デジタルが苦手でも全然大丈夫です」と渋谷さんは笑います。
受講料は35,600円(税込)。
区の講座としてはちょっと高めに感じるかもしれませんが、
民間で同じような内容を受けようとしたら数十万円はざら。
AIを使った伴走型プログラムや、プロ講師による対話型セッションが3ヶ月みっちり詰まっていると考えると、むしろ「破格」かも。
立場も年齢もバラバラ。でも、なぜかつながる
「この講座の面白いところは、参加者の幅がすごく広いことですね」と渋谷さん。
すでに第一回を開催していますが、そこには20代の若手社員から、経営者、フリーランス、行政職員などが参加。

「みんな肩書き関係なくフラットに話すんです。“上司”でも“部下”でもなく、一人の学び手として。その中で、互いの課題や気づきが自然と混ざり合っていくんです」
例えるなら、“大人の部活”みたいな場?社会人になると新しい友だちってなかなかできないけれど、
ここでは自然と仲間ができる感じ。なんか、いいなぁ。
終わってからが、本番!?
「修了して終わり、ではなく、
そこから動き出す人たちが次々に現れるのが理想です」と西岡さん。
港区立産業振興センターでは、ほかのプログラム——たとえばヨリミチ部など——とも連動しながら、
“人が循環する仕組み”をつくっています。
リーダーって、決して特別な人のことじゃない。
現場で頑張る誰かが、ちょっとだけ視点を変えて、仲間を巻き込みながら進む——それも立派なリーダーシップ。

楽しそうなところには自然と人が集まる、というのも大事なポイントかも
学ぶための講座ではなく、動くための講座。
この3ヶ月で“行動の一歩”を踏み出した人が、田町から少しずつ増えていく。
そんな未来を想像すると、なんだか少しワクワクしてきます。










