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FOOD

田町に豆腐屋さんができた。イタリア出身のマウロさんに話を聞いてきた

田町に、新しく豆腐屋さんができました。

え?今どき?そうなんです。都心で、しかもこの時代に、まちの豆腐屋さんが新しくできるって、けっこう珍しくないですか?

場所は、三田警察署の先、品川寄りのエリア。その先は行き止まりになっているので、地元の人でも用事がなければなかなか通らない場所。でも、だからこそあえて行ってみてほしい。お店の名前は「とうふやたかはし芝浦店」。

店に立つのは、イタリア出身のマウロさんです。イタリアの方が、田町で豆腐屋さん。これは気になる。ということで、お話を伺ってきました。

アパレルから、うどん、寿司、そして豆腐へ

マウロさんは日本に来て30年以上。奥さんが日本人ということもあり、日本の暮らしや食文化にも長く親しんできました。

もともとはアパレルの仕事をしていたそうですが、その後、徳島でうどんや寿司に関わる仕事も経験。日本の食に触れる時間が少しずつ増えていきます。

さらに転機になったのが、田町のご近所、天王洲アイルの寺田倉庫で働いていた頃。食への関心が高く、豆腐作りにも興味を持っていたマウロさんは、品川のまちづくりに関わる人を通じて、茨城県八千代町の豆腐店「とうふやたかはし」の高橋真弘さんと出会います。

そこから高橋さんのもとへ通い、豆腐作りを学ぶように。イタリアから日本へ。アパレルから日本の食へ。そして、うどんや寿司を経て、豆腐へ。聞けば聞くほど、面白い経歴です。

でも、なぜ豆腐だったの?

マウロさんが豆腐に惹かれた理由は、大きくふたつあるそう。ひとつは、健康への関心。もうひとつは、日本の大豆文化をもっと広げたいという思いです。

年齢を重ねるなかで、体にいい食べものを考えるようになったマウロさん。いろいろ調べていくうちにたどり着いたのが、大豆でした。

日本では昔から、豆腐、味噌、醤油、納豆など、いろいろな形で大豆を食べてきました。けれど食生活が欧米化し、その存在は少しずつ希薄になってきています。

「日本人は昔から大豆を食べてきた。健康的に生きるうえで、とても大事なものだと思っています」

そんな話を、イタリア出身のマウロさんから聞く。なんだか不思議。でも、外から来た人だからこそ、日本の食文化のすごさに気づくことがあるのかも。

もともとは海外で豆腐屋をやりたいという思いもあったそうですが、ヨーロッパで豆腐屋を始めるには、設備や規制、機械の対応など、ハードルがかなり高い。製造設備を入れるにも大きな費用がかかるそうです。

そしてもうひとつ、マウロさんが気にしていたのが、豆腐屋さんが減っていること。かつては、まちの中に豆腐屋さんがありましたが、いまはだいぶ少なくなっています。昔は鍋とか器を持っていくと入れてくれたんですよね。近所の豆腐屋さんにお遣い行ってたなぁ。

茨城県八千代町から、田町へ

ちなみに、芝浦店で豆腐を作っているわけではありません。豆腐は茨城県八千代町の「とうふやたかはし」で作られ、週2回ほど芝浦店へ届けられます。とうふやたかはしは1958年創業で、現在は3代目の高橋真弘さんが代表を務めています。

高橋さんにも電話で少しお話を伺いました。高橋さんとマウロさんが出会ったのは、今から6年ほど前。その後、マウロさんは高橋さんのもとへ通い、豆腐作りを学ぶようになりました。

さらに2年ほど前からは、週末に茨城へ通って豆腐を作り、世田谷のパン屋さんで販売する取り組みを続けてきたそうです。そのなかで「豆腐は求められている」と感じ、店舗を持つ話が進んでいきました。

田町店は、そんなマウロさんと高橋さんが一緒に始めた、都心での新しい拠点。八千代町の豆腐屋さんと、田町の暮らしがつながる場所でもあります。

大豆と、にがりと、職人の技

とうふやたかはしの豆腐には、レギュラー商品とプレミアム商品があります。

レギュラー商品は、昔から作っている「ソフトもめん」など。茨城県産の大豆を使い、硬すぎず、柔らかすぎず、味噌汁にも冷奴にも使いやすい豆腐です。

一方、プレミアム商品は、新潟県産の大豆や天然にがりを使ったもの。高橋さんによると、豆腐作りで大切なのは大豆だけではなく、にがり。しかも、天然にがりを使って豆腐を固めるには、職人の技術が必要なのだとか。

とうふやたかはしで使っている天然にがりは、新潟県村上市の塩工場から取り寄せているもの。塩を作る過程で、少しずつ出てくるにがりを使っています。

豆腐は、大豆と水とにがりでできている。そう聞くとシンプルですが、だからこそ素材と技術の差がそのまま出る。奥が深いなぁ〜。

「甘みと風味がいい大豆の特徴を、豆腐作りで引き出している」と高橋さん。

実際に試食させてもらったのですが、普段自分が食べている豆腐とはまったく違いました。味がしっかりしているというか、これがメインになるというか、もうこれでいい、これがいい、という感じ(語彙力のなさ)。

ソフトもめんは味噌汁にも、冷奴にも、焼いても使いやすい。毎日の食卓にすっと入ってくる日常使いにぴったりの豆腐です。一方で、スプーンですくって、塩だけで食べたくなるような濃厚な豆腐も。大豆の甘みをしっかり味わうなら、こういう豆腐もよさそう。お酒のツマミにも。

おからドーナツと豆乳スムージーも

とうふやたかはし芝浦店では、豆腐だけでなく、豆乳ベースのスムージーや豆乳ドリンクなどのドリンク、おからドーナツなどのスイーツも販売しています。

商品はすべて、小麦・卵・乳製品不使用。アレルギーがある方やヴィーガンの方、からだにやさしいものを選びたい方にも楽しんでもらえるように作られています。

おからドーナツは、茨城の店舗でも人気の商品。プレーン、かぼちゃ、チョコバナナなど、いくつか種類があります。スイーツを手がけているのは、高橋さんの奥さん。パティシエでもあり、豆腐や豆乳、おからを使ったスイーツを作っています。

高橋さんによると、茨城のカフェを始めるきっかけのひとつに、アレルギーのある子どもたちとの出会いがあったそうです。小麦、卵、乳製品を使わず、白砂糖も使わないスイーツを作れないか。そんな思いから、豆乳スイーツの開発が始まりました。

ちなみに揚げドーナツは芝浦店で揚げているので、タイミングが合えばできたてに出会えるかも。店内にはちょっとしたカフェスペースもあるので、マウロさんとおしゃべりしながら一服するのもオススメです。

田町で、健康的なお弁当も?

そして個人的にかなり期待しているのが、今後予定しているというお弁当。

豆腐や大豆を使ったお弁当が近所で買えたら、これはかなりうれしい。マウロさんによると、豆腐を取り入れた健康的なお弁当を考えているそう。

仕事の合間に、ちゃんと体にやさしいものを食べられる。しかも豆腐屋さんのお弁当。これは期待大です。

ちなみにお店に入ってすぐの壁面には、田町在住の現代アーティスト・しゅんさくさんのイラストも。黒いテープでポスターを貼ったように見えますが、実は壁に直接描かれたもの。壁のザラッとした質感が豆腐に似ていたことから、油鉛筆で表面を少しテカッと仕上げているそう。

スーパーやコンビニで豆腐を買うのももちろん便利。でも、豆腐屋さんがあるまちってなんかいいですよね。今日はどれにしようかなと選べる。お店の人におすすめを聞ける。ついでに豆乳スムージーやおからドーナツを買える。

気になった方はぜひ、マウロさんに話を聞きながら、豆腐を選んでみてくださいね。

INFORMATION

とうふやたかはし芝浦店

三田警察署の先、品川寄りの場所にできた豆腐屋さん。茨城県八千代町の「とうふやたかはし」直営。店主はイタリア人のマロウさんです。

住所
港区芝浦4-2-23
営業時間
11:00〜18:00
定休日
日曜・月曜
WEB
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Instagram
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田町新聞編集長

普段はだいたいSHIBAURA HOUSEで仕事をしています