Cyclo Salon(シクロサロン) –レジェンドが営む、古き良き自転車屋さん –

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最近は街なかに昔ながらの自転車屋さんをあまり見かけなくなりましたが、ここ田町に自転車界のレジェンドが営んでいる自転車屋さんがあることをご存知でしたか?


慶応仲通り商店街に、築90年越えの建物でたたずむ「Cyclo Salon(シクロサロン)」。

ほぼ毎日のようにこのお店の前を通っている私にとって、「自転車屋さんっぽいけれど、営業しているのかしら?」「マニアックそうだけど、パンク修理なんかも持ち込めるのかしら?」と、以前から気になって仕方がありませんでした。ということで、今回思い切って取材をお願いしたところ、店主の植原(うえはら)さん、快くOKしてくださいました。

もともとはおじいさまがこの場所で明治40年に町工場を創業し、周辺工場の下請けをされていたとのこと。ここで生まれ育った植原さんは、中学時代から実用車(現在のママチャリのような役割の自転車)でよくサイクリングをしていたそうで、法政大学卒業後の昭和39年、東京オリンピックの年に丸石自転車に就職。その後、サイクリング関連の雑誌社への転職を経て、昭和44年にスポーツ車のフルオーダー専門店「シクロサロン」を開業(開業当時の屋号は「シクロサロン植原」)。今年で54年目を迎えるそうです。なんと、自転車関連の著書もこれまでに10数冊出版されているとのこと。

お店を経営するかたわら、丸石自転車には縁あって嘱託で15年間お勤めになり、嘱託2年目に植原さんが設計した自転車「丸石エンペラー」は大ヒット!会社の売上にもずいぶん貢献したようです。

植原さんのお店は、既製品の自転車を販売しているのではなく、スポーツ車専門でお客様の注文(希望)に合わせて設計し、自転車を作って販売するという、いわゆるオーダーメイドのお店です。パーツを選んで組み立てるだけでなく、設計からできるなんてすごいですよね。

昔は競技用の自転車も作っていて、「港サイクリングクラブ」(2024年に創立75周年を迎えます)という実業団で監督もされ、現在はクラブの会長(四代目)を務めています。1973年「東京―大阪タイムトライアル」という挑戦で、20時間50分という新記録を打ち出した橋本治選手。走りの計画を立て、伴走車の助手席から橋本選手を指導した監督が植原さんでした。まさに自転車界のレジェンド!

なお、スポーツ車は車体があれば1週間ほどで完成するものの、車体がなければ受注から納品までに1年はかかるそう。お値段も車体のみで22〜23万円、それにお客様の希望のパーツを入れていくと、一台40〜50万円に。しかし、植原さんいわく、「事故さえしなければ、きちんとメンテナンスしながら50年以上は乗れますからね」と。実際に店内には、植原さんのお店で作った自転車の持ち主が他界され、その自転車を引き継いだ方が乗れなくなって、それをまた別の方が引き継いで、現在メンテナンス中だという自転車がありました。それだけ長く乗れることを考えると、高い買い物ではないと思いますし、自転車も本望ではないでしょうか。

取材にお邪魔した時も、店内には、めずらしい自転車や、博物館を思わせるほどのパーツのコレクションがあり、変速器に至っては、昭和20年代からのコレクションが所狭しと並んでいました。自転車マニアにはたまらない空間といえそうです。

ちなみに最近は街なかに自転車屋さんが減ってしまったこともあり、「うちのママチャリがパンクしちゃった!」というような修理にも対応しているそうです。

自転車が好きな方はもちろん、家の近所で修理できなくて困っていたという方、ぜひ植原さんを訪ねてみてください。柔和な笑顔で気さくに対応してくださいますよ!

Cyclo Salon(シクロサロン)

港区芝5-20-22

TEL:03-3452-6968

営業時間:10時〜19時

定休日:日曜・祝日

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