「Hola!(オラ)」
スペイン語で「こんにちは」を意味するその言葉を、2歳から6歳の子どもたちが元気よく口にした。4月のとある日の午後、港区・芝浦のプリスクール「Pikkas(ピッカス)」の教室で。
仕掛け人は、芝浦アイランド在住の小西さん——子どもたちからは「コニー先生」と呼ばれている。この春から多文化共生プログラムを動かし始めた。

保育のプロが、次のステージへ
2017年に大手企業を辞め、保育業界へ転身した小西さん。7年間、保育の現場に立ち続け、2024年3月に第一線を退いた後も、じっとはしていなかった。
「すべてのこどもが笑顔で暮らせる」という思いを胸に、2025年に日本語指導者の資格を取得。さらに「多文化共生プログラム」の開発へと動き出した。かなりアクティブだ。
今回のプログラムに欠かせない存在が、スペインからやってきたクリスティナさん——子どもたちからはクリス先生と呼ばれている。

出会いは意外なところから。小西さんの小学校時代の同級生がマドリードの大学で日本語を教えていて、そのゼミ生のひとりがクリスティナさんだった。「日本で幼児教育がしたい」という彼女の思いと、小西さんの構想がつながった。クリスティナさんはワーキングホリデービザで来日し、現在は千葉の幼稚園で週3回働きながら、この活動にも参加しているそう。

受け入れてくれたのは、昨年春に芝浦3丁目にオープンした英語保育のプリスクール「Pikkas」。まだ歴史は浅いが、英語環境へのこだわりや地域との交流にも積極的な、魅力的な施設だ。代表の中川さん(写真左)が快く迎え入れてくれ、試せる場を提供してもらえることになった。
プログラムの名前は「コニー先生のどこでもドア・タイム」。毎回、世界のどこかへ30分の旅に出るイメージだ。
30分でスペインを一周する
「Today’s special guest is Chris from Spain!」
コニー先生が博士のコスチュームで登場。「格好してきた方が、子どもたちが早く近づいてくれる」というのがコニー先生のアイデアで、案の定、子どもたちはすぐに駆け寄ってきた(本人は博士のつもりだったのに、「医者みたい!」と言われたそうだが 笑)。
クリス先生の呼びかけに、子どもたちが「Hola!(オラ)」と声を合わせた。続いてコニー先生お手製のスライドを使ったクイズタイム。「What color is this?」には、「Rojo!」、「What are the popular dishes in Spain?」には「Paella(パエリア)!」と声が上がる。たった数日前に同じスライドを見ただけなのに、2歳から6歳の子どもたちが、次々と英語とスペイン語で答えていく。

赤い布を持って、牛になる
とくに盛り上がったのは、お祭り体験のコーナー。

「スペインの闘牛」では、みんなで赤い布を持って牛になりきり、くぐり抜けていく。「トマト祭り」では、赤いスポンジボールをかごに向かって投げ入れる。ペットボトルのキャップで作ったカスタネットを鳴らしながら、「ふらふらフラメンコ」で体を動かす。最後は「チョコ・ラ・テ」のリズムで締めくくり、記念撮影。

教室には笑い声があふれていた。フラメンコ衣装を身につけた本場スペイン人の先生が踊って見せてくれる——そんな体験、ふだんはなかなかできない。このプログラムがPikkasにとっても良い刺激になっているのは明らかだ。

取材を終えて帰ろうとしたとき、一人の子が駆け寄ってきた。「What’s your name?」。正直、最初は何を言われているのか理解できなかった(恥ずかしながら)。知らない大人に英語で自分から話しかけてくる。そのコミュニケーション力にも驚かされた。
次の「どこでもドア」は、どこへ?
今後はPikkasだけでなく、さまざまな幼児施設にゲストとして出向く形での展開も考えているという。
また、海外駐在の経験があって英語を話せるシニアが、子どもたちのそばでボランティアとして活躍できる仕組みも構想中だ。「英語で自分のスキルや趣味を子どもたちに伝えたい」というシニアの方、現在仲間を募集しているとのこと。田町エリアには海外経験を持つシニアも多い。地域の大人と子どもたちがこうしてつながっていくのは、とてもいい流れだと思う。
芝浦から始まったこの「どこでもドア」。子どもたちの可能性を広げていきそうで、今後の展開が楽しみだ。
Pikkas International Preschool
場所:港区芝浦3-19-17 アンビエンテ芝浦 1階
Web:https://pikkasinternational.com/
多文化共生プログラム問い合わせ先:NPOクリエィティブクラブ 小西貴彦 info@creativeclub.jp