愛着のジーンズをまた履ける幸せ。田町の凄腕デニム修理店

シェア・送る


最近、巷で人気のヴィンテージ古着。

特にデニムはかなり値上がりしているとか。ヴィンテージ以外でも、新品を洗わずに育てたり、気に入った色落ちの古着を履いたり、90年代に人気だったファッション誌「Boon」を熟読したりと、ジーンズに愛着がある方も多いのではないでしょうか?

実はここ田町に、全国から依頼が絶えない凄腕のデニム修理専門店があるのをご存知でしょうか?しかも店主は田町出身。今回は「ジーンズリペア工房 jeans704」店主の川畑さんにお話を伺いました!

お店は「麻布ラーメン 芝4丁目店」や「カレーの店 よすが舎」などが入っている第一京浜沿いにあるビルの地下一階(入口はビルの左側)

田町太郎
「本日はお時間いただきありがとうございます。まずは川畑さんのキャリアやここにお店を構えた経緯を伺えますか?ご家族がクリーニング店を経営されていたとか」

川畑さん
「はい。実家はもともと田町駅近くの線路沿いに昔からあるクリーニング店です。東京で一番古いくらいだそうです。場所は第一京浜と線路の間、スーパーマルエツの近くですね。そこで昔からクリーニング店を営んでいて、いま兄で4代目になります。

自分もそこで働きながら、クリーニング以外に修理などもできる範囲でやっていたんです。技術をコツコツ勉強したり、夜間の学校に通ったりもしてました」

店主の川畑さん

田町太郎
「そうだったんですね。どんな学校に通われていたのですか?」

川畑さん
「鞄の職人さんを養成する学校でした。実家のクリーニング店では、当時革のクリーニングもやっていたんです。鞄もそうですけど、革製品って異素材が複数組み合わさったものが多くて、クリーニングするにも別の素材とは一緒に洗えないので、一度バラしてから洗って、また戻す。その過程で縫製の技術も必要になってくるんです。

実家のクリーニング店で、革製品のシミ抜きをしていたら、だんだんそっちのお客さんが増えてきて。それで自分で店を構えようと独立したんです」

田町太郎
「そこからいまのジーンズリペア専門店にはどうやって?」

川畑さん
「革製品を扱っていると、革だけじゃなくて一緒に他の素材、特に厚い生地を取り扱うことが多くなるんです。そうするとお店も厚い生地用の設備が増える。それで帆布(キャンバス)とかジーンズとかの修理を始めたんです。そしたら段々とジーンズが増えてきて。いつの間にかジーンズがメインになっちゃいましたね 笑」

田町太郎
「なるほど。ということは独立されて最初は革製品の修理屋さんだったんですね」

川畑さん
「そうですね。今も革製品の修理をやっていますけど。でもほとんどジーンズですね」

田町太郎
「最初の店舗は浅草橋だったそうですが」

川畑さん
「はい、浅草橋は服飾系の問屋さんが多く資材がそろいやすかったんです。ただ両親も高齢にもなり、自分も近くにいた方がいいかなと思って田町に移ってきました」


田町太郎
「田町にお店がある理由がよくわかりました。
ちなみに店名の704は、「な・お・し」 から来ていたんですね!なんで704なのかなと思っていました 笑」

川畑さん
「はい、ちょっと疑問を感じて聞いてもらえるくらいの方が話題になっていいかなと思いまして。あとジーンズっていえば、501みたいに3桁ナンバーがところがあるので」

田町太郎
「確かに!! お客さんからの依頼はどういったものが多いですか?」

川畑さん
「やはり、ジーンズに穴が開いてしまったのを叩いて直すのがメインですね。あと一般的な丈詰めとかウエスト詰めとかもあります」

田町太郎
「やはり他の店では対応できないから…という依頼が多いですか?」

川畑さん
「どうですかね?大きくダメージがあるものから、簡単な修理のケースもあるので一概に他店ではできないとは言えないですけど。ただ、うちはご依頼いただいたものはできるだけ対応したい、とは思っています」

専門機材や糸が天井までぎっしり詰まった、圧巻の専門工房

田町太郎
「せっかくなんで、今日実際に修理してほしいジーンズを持ってきました。突然ですが、見ていただけますか?実はこのジーンズ、前に洋服お直し店に持っていったら、直せません!って断られたことがありまして…汗
古着で買った時から全面的にリペアされていたんですが、履くうちにリペアの部分が破けちゃって、あと股の部分も破けてきてしまって。そのまま履くと下着が見えてしまうんです 苦笑」

川畑さん
「パッと見ちゃいますね……
どのぐらい補強するかになってくると思うんですけど、まあとりあえずここまでは当たっているので、こことここををつなげるようにして。ここも同じようにこう裏当てして、叩いて、ミシンでこうして、補強。という感じですかね」

 
田町太郎
「え…修理できそうですか??」

川畑さん
「大丈夫です。破けてる周りもちょっと生地が薄いので、大きめにリペアする加工は必要かなと思いますけど」

田町太郎
「なんと!引き受けていただけるとは嬉しいです!!」

同行していた編集長の心の声
(しかし、ほんとすごいボロボロ。よく捨てずに持ってたな……)

田町太郎
(なんか編集長がニヤけてるのは気のせいだろうか?ま、いいけど……)
「ジーンズをリペアする際、とくに気をつけてることはありますか?」

川畑さん
「うーん、そうですね。まあ、モノにもよりますけど、もともとダメージが入っているものは、なるべくイメージを合わせるというか、崩さないようには気をつけてます。
あとは、感覚的なものですけど、ちょっとかっこいい処理になるようには心がけてます」


田町太郎
「おぉ〜〜(かっこいい)。ちなみに、持ち込まれたジーンズのパーツが無くなっていた場合はどうするんですか?」

川畑さん
「パーツは、リベットとかボタンとか、基本的には打ち込みって言って、1回打ったら外したら再利用できないので、無かったり壊れたりしている場合は別のものをつけるという感じにはなりますね。なるべく在庫のなかで近いものをつけるようにしてます」


田町太郎
「そういうのってどうやって仕入れてらっしゃるんですか。古いものもあったりしますよね?」

川畑さん
「そうですね。アメリカでこういうパーツを仕入れている業者さんに分けてもらっています」

田町太郎
「基本的にここにある大量の糸などはすべてジーンズ用ですか?」

川畑さん
「はい。ステッチ用とか、そこにある細い糸は、叩いて直すときのための色合わせ用ですね。デニムの色合いに合わせて叩いた方が目立ちにくいので」


田町太郎
「さっきも気になっていたんですが。叩くとは?実際に金づちとかで叩くわけではないですよね?」

川畑さん
「破れたところを補修するとき、裏当てしてミシンで細かく縫って補強するんです。デニムは“縦落ち”って言って、その名のとおり縦に色が落ちていくんですが、その色落ちのラインに合わせて糸を入れることで比較的目立たず自然な感じで仕上がります。その手法を“叩く”と表現しています」


田町太郎
「なるほどなるほど。裏に入れる生地は大体決まってるんですか?ジーンズによって違うんですか?」

川畑さん
「補強布は、基本的には接着芯というものを使いますけど、うちの場合は穴の部分にはちょっと厚めのものを使って、その周辺は薄いものを使って全体の質感をぼかす感じにしています。そうしないと仕上がりが不自然になってしまうんです」

田町太郎
「そんなに細かく補修されているんですねぇ。ちなみに修理料金はどうやって決まるんですか?」

川畑さん
「基本的には修理箇所の大きさと手間によります」

田町太郎
「やっぱり持ち込まれるジーンズはヴィンテージだったり、良いものが多いですか」

川畑さん
「良いものは確かに多いです。それこそヴィンテージとかは何十万、何百万みたいなものもあります。ただファストファッションブランドのジーンズも珍しくないです。結局、愛着を持っているかどうかじゃないですかね」

田町太郎
「いいですね。自分も愛着を持って履き続けたいです。お店にはたくさん機械がありますけど、やはり特殊なものが多いのですか?」

川畑さん
「そうですね。このミシンはユニークで、もう機械自体がヴィンテージ。チェーンステッチ用の裾上げだけできるミシンなんですけど」


「裏側がチェーン状になってるような、ヴィンテージ感が出やすいような縫い方ができる。えーと、少し専門的ですけど、これで縫うとアタリ(色落ちの模様)が暴れるんです。

シングルステッチだと縦にアタリが入りやすいんですけど、チェーンステッチだと斜めにアタリが入る。さらにこれは昔のミシンなので、ずれて縫われて、よれるというか、巻くというか、要は昔の精度の悪いミシンなので、いまのミシンみたいに綺麗に縫えなくて。逆にそれがヴィンテージ感があるみたいで 、マニアの人は結構わざわざこれを探して来られます。面白いですよね 笑

ただもう製造していない機械なので壊れたらおしまいです」
 

田町太郎
「どの機械をメインで使っているんですか?」


川畑さん
「ここにあるのは基本的に全部使います。ジーンズって本来は部位によって使うミシンが違うんです。例えば、負荷がかかりやすい部分を補強するカンヌキって呼ばれるステッチだけ縫うミシンもありますし、ベルトループだけを裏側も一緒にザーッと縫っていくようなミシンもあります。今のコンピュータミシンとかだと、全部セットしていっぺんに縫うようなミシンもあるみたいですね」

田町太郎
「ジーンズってほんと奥が深いんですねぇ。やっぱり川畑さんも個人的にジーンズがお好きなんですか?」

川畑さん
「まあ、それなりには。正直、お客さんには相当詳しい方も多いので、僕程度が…という気もします 笑」

ジーンズへの愛着やこだわりがたくさんの川畑さん。みなさんが安心して大切なジーンズを預けられるのも納得でした。

そして・・・取材後日、修理していただいたジーンズを受け取ってきました!

あらためて、こちらが修理前


そして、帰ってきたのがこちら!


どうです?あまりの自然な仕上がりにびっくり!!
2枚を見比べて、え、どこが変わったの?と思った方もいるのではないでしょうか。
それでいて、穴はしっかり補強されていて、これからもガシガシ履けそうです。

違和感なく、元々のイメージをまったくと言ってよいほど崩さずに修理をしていただけるなんて驚きです。本当に感動しました。ちなみに今回の修理費用は約7,000円。大満足です。

愛着のあるジーンズを修理して履き続けたい、という方。こだわりの1本だからこそ仕上がりが心配で修理に出せていない、という方。ここジーンズリペア704なら安心です。専門店だからといって、店主が小難しいウンチクを語ったり、高額な修理費を請求されたりする心配はありません。優しく相談に乗ってもらえるので、ぜひ気軽に訪れてみてくださいね。

ジーンズリペア工房 jeans704

場所:港区芝4-5−15 クレール芝 地下1F-B102

営業時間:13時~19時30分(日・祝日除く)

Web:https://j704.kawa39.com/

シェア・送る