思い出の店をどうしても残したい!元常連客の奮闘に迫る

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慶応仲通り商店街にある「Flag(フラッグ)」は、
1964年から52年間続いた伝説の喫茶店「ペナント」を同店の常連客であった飯田(はんだ)さんが継承し、昨年7月にオープンさせたお店。数多くのメディアに登場しており、既にご存知の方も多いかと思いますが、田町を語る上でやはり外せない!ということで、田町新聞もあらためて取材をさせていただきました。

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Flagをオープンさせた飯田さん。とっても穏やかですが、言葉の端々にペナントに対する熱い想いが感じられます

田町新聞
「そもそもペナントはなぜ昨年、閉店することになったんですか?」

飯田さん
「ご高齢のマスターが体調を崩されてしまって。実は2時間くらいかけて毎日、神奈川から通われていんですよ」

田町新聞
「え!てっきり地元の方だと思っていました。それは確かに大変でしたね」

飯田さん
「はい、それで昨年の4月に閉店するという話になりまして」

田町新聞
「で、飯田さんがそのままお店を引き継いだと?」

飯田さん
「いえ、実は建物のオーナーさんは別にいらしてペナント閉店後、一般に募集をかけられたんです。なので厳密に言うと引き継いだというわけではなくて、“場の継承”という感じでしょうか」

田町新聞
「なるほど、そうだったんですね」

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ペナントから建物や間取りはそのままに、装飾をリニューアル。オシャレで可愛らしい雰囲気になって2017年7月にオープンしました。ちなみに飯田さんも現在、2時間くらいかけてこのお店に通われているとか・・・

飯田さん
「そのままの形で残すことに意味があると思ったので、オーナーさんに掛け合って、何度も通って、手紙を書いたりして、場を抑えることができました」

田町新聞
「ペナントに相当な思い入れがあったんですね」

飯田さん
「私は慶應義塾大学の商学部に通っていたんですが、所属していた應援指導部(いわゆる応援団)のたまり場になっていて。居心地がとてもよかったんです。当時からマスターに憧れていて、将来自分もこんなお店を持ちたい!と思っていました」

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「とても包容力がある人でとくに学生には優しかった」とマスターについて話す飯田さん

田町新聞
「店名Flagの由来は?」

飯田さん
「ペナントと同じ“旗”という意味からFlagと名付けました。同じ旗のもとに集まるといった想いも込めています。あと余談ですが、應援指導部のときに私、旗手長をやっていまして」

田町新聞
「それはピッタリのネーミングですね」

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木の天井や壁、椅子などはペナント当時のまま。当時を偲んで訪れる人にとっても新しく訪れる人にとっても居心地の良い空間になっています

田町新聞
「田町新聞も以前、何度かペナントを利用したことがあるんですが、ずっと長渕剛の曲がかかっているなど、喫茶店としてはかなり個性的なお店だったような・・・汗」

飯田さん
「そうですね 笑 でも実はマスター、元から長渕剛のファンだったというわけではないんですよ」

田町新聞
え!タオルとか色紙とかお店にあんなに飾られていたのに?」

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今ではこんな可愛らしい空間になっていますが、ペナント時代は長渕グッズのほか、野球部や應援指導部、落語研究会といったここをたまり場としていた部の写真などがいたるところに貼られていました

飯田さん
「はい。應援指導部に長渕剛が好きな先輩がいて、コンサートに行ったらマスターにお土産のCDを渡したりしていたそうです。それが、若くしてお亡くなりになってしまって、その先輩を偲んでマスターは長渕を聞くようになったそうです」

田町新聞
「なんと、そんなストーリーがあったとは」

飯田さん
「しかも、この話には続きがあって・・・。その後、偶然長渕剛のマネージャーさんが来店されて、なんで曲が流れているんですかと聞かれて理由を伝えたら“今度長渕を連れてきます!”という話になって。雑誌の企画で実際に来店して應援指導部と対談されたそうです」

田町新聞
「それはすごい!」

飯田さん
「タオルとか色紙はその時にサインしてもらったものですね」

田町新聞
「そういえば、飯田さんは大学卒業後、Flagをオープンされるまで何をされていたんですか?」

飯田さん
「銀行に4年半、NGOに3年ほど勤めまして、NGOでは主に東日本大震災の被災地で復興支援を行っていました。その後、NGOが撤退するというタイミングで自分がやりたいことをあらためて考えて、何年かかるかわからないけれど、修行していつか自分の店を持とうと飲食の道に進みました」

田町新聞
「思い切りましたね」

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ちなみに今お店の中央で使用している巨大な机の天板は、今も復興の事業に関わっている大学の同期がオープン祝いで仙台から運んでくれたもの。脚にはペナントで使用していた懐かしのテーブルゲームが使われています

飯田さん
「フリーターで何店舗か掛け持ちして、調理やホールなど、色々と経験させてもらいました。学生の時にアルバイトをしていた麻布十番のすき焼き屋さんの大将が体調を崩されて大変そうだったので、戻って手伝ったりもしていましたね」

田町新聞
「最近そういう話が多そうですね・・・汗」

それにしても、飯田さんは根っからの応援団気質だなぁ。

飯田さん
「当時はよくペナントに立ち寄ってマスターの顔を見てから麻布十番のお店に出勤していました」

田町新聞
「大学卒業後もペナントを利用していたんですね。本当に好きだったんだな〜。あ、それで飲食店での経験を生かして、昨年7月にいよいよ自分の店としてFlagを持つことになるんですね」

飯田さん
「いえ、実はその少し前の5月に“IROHA(いろは)”というカフェをオープンしていまして・・・」

田町新聞
はい?え! Flagは2店舗目??しかもそんな短期間に?」

飯田さん
「そ、そうなんですよ 汗
麻布十番のすき焼き屋さんにバイトで通っていたころに、ちょうどいい物件が空いていたので、自分の実力試しということで始めたんです。それがIROHAをオープンしてひと月足らずでペナントを閉じるという話になったので、あっちをやりつつこっちも・・・」

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いやぁやっちまいました、ハハハ

田町新聞
「いやハハハじゃなくて!まったくこの欲張りやさん! いきなり2店舗って大変だったんじゃないですか?」

飯田さん
「当初、IROHAのほうは毎日お店を空けられませんでした。ただ、近所でお弁当屋さんを18年間もやられていた方に入ってもらえることになって、最近は毎日オープンできています」

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こちらが芝3丁目にあるカフェ「IROHA(いろは)」。Flag同様、ブルーの軒先きテントが目印です

田町新聞
「それはよかったですね〜」

飯田さん
「はい、パティシエのスタッフにも入ってもらって。焼き菓子やケーキはお店で作っています」

田町新聞
「あ、このケーキとっても美味しいです!お酒にも合いそうですよね」

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味も見た目もオシャレなゴルゴンゾーラのチーズケーキ。はちみつをかけていただきます

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レアチーズケーキも絶品。2種類のベリーをミックスしたソースが絶妙なアクセントに

飯田さん
「ありがとうございます!夜はワインとケーキの組み合わせなんかもオススメです」

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ランチでは「すきやきうまみ牛肉のカレー」や「トマトのハヤシライス」などを提供。写真は「カレーとハヤシのハーフ&ハーフ」。さすが、すき焼き屋さんで修行していただけあってお肉が美味い!夜はすきやきのコースなども提供(要予約)しています

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スタッフの方々が作業している姿もなんだかいいなぁ。

昼はカフェ、夜は食事もできるバーとして利用できるこちらのお店。店内は照明を落とした空間のため、外からは一見入りにくく感じるかもしれませんが、飯田さんはじめスタッフの皆さんが優しく出迎えてくれるので心配なし!一人でぼーっとしたいときなんかに特にオススメ。一歩お店の中に入れば、周囲の喧騒が嘘のようにゆったりとした時間を過ごせますよ。

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Flag(フラッグ)

〒108-0014東京都港区芝5丁目26番3号
TEL 080-9195-0429
昼 11:30 – 14:00
夜 18:00 – 22:00
定休日 日曜・祝日
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